最も崇高な芸術とは、人を幸せにすることだ
映画『グレイテスト・ショーマン』をアマプラで鑑賞しました。
ヒュー・ジャックマン主演で2017年に公開されたミュージカル映画です。
大変人気の高い本作ですが、実はロッテン・トマトの評価は55%と酷評なんです。
ロッテン・トマトはアメリカの映画批評家の評価をまとめて観ることができるサイトです。
じゃあ『グレイテスト・ショーマン』はアメリカの映画批評家からは不人気なんだね…。
今回の記事では、『グレイテスト・ショーマン』が映画批評家から嫌われる理由と、映画に登場するP・Tバーナムという人物について解説していきます。
あらかじめお伝えしておくと、私は『グレイテスト・ショーマン』を嫌いではありません。面白いと思います。でも、非常に惜しい映画だと感じるのです。そのあたりも終わりの方でお伝えします。
嫌われる理由はキャンディーコーティング
『グレイテスト・ショーマン』が批評家から嫌われる理由を解説していきます。
まずは、あらすじを。
19世紀半ばのアメリカ。幼馴染の妻と子供たちを幸せにすることを願い、挑戦と失敗を繰り返してきたP.T.バーナムは、ついにオンリーワンの個性を持つ人々を集めたショーをヒットさせ、成功をつかむ。しかし、彼の型破りなショーには反対派もいた。若き相棒のフィリップをパートナーとして迎え、彼の協力によりイギリスのヴィクトリア女王に謁見するチャンスを得たバーナムは、そこで美貌のオペラ歌手ジェニー・リンドと出会う。彼女のアメリカ公演を成功させ、一流のプロモーターとして世間から認められようとするバーナムだったが…。
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/greatest-showman
『グレイテスト・ショーマン』はP・Tバーナムの人生を基にしています。
P・Tバーナムという人物は、バーナム効果という心理学用語にもなっているほど著名な人物です。
バーナム効果は「We’ve got something for everyone」(誰にでも当てはまる要点というものがある)というバーナムの言葉からきています。
本作が批評家から嫌われる理由は、P・Tバーナムを美しく描きたいがために、事実を捻じ曲げているというところです。
こういったことをキャンディコーティングと言います。
P・Tバーナムという人物は、結構えぐいことをやっているんですが、ヒュー・ジャックマンに気をつかったんでしょうね…。
また、『グレイテスト・ショーマン』では、南北戦争について全く触れていません。
『グレイテスト・ショーマン』は1865年前後が舞台です。
1865年前後といえば、アメリカは南北戦争真っ只中。
でも『グレイテスト・ショーマン』には一切その単語や要素が出てきません。
黒人を差別するような人や言葉はそこそこ出てくるんですが、これはちょっとおかしいですよね。
曲芸師で黒人のゼンデイヤと、ザック・エフロンのラブロマンスは、多分なかったんじゃないかなと思います。
また、あの当時は象も登場していません。P・Tバーナムのサーカスで登場したのが世界で初めてではあったのですが、博物館が焼けたあの当時よりもっと後で象を使い始めます。(余談ですが「ジャンボ」という名前の象で、この象から大きいものを「ジャンボ」という呼ぶようになったそうですよ)
また、作中に登場するオペラ歌手ジェニー・リンドも、あんな風にバーナムをたぶらかすような人物ではなかったそうです。夫のいる堅実な人柄だったのだとか。
あと、親指トムとも町中で出会ったような演出でしたが、実際はP・Tバーナムの遠い親戚なのです。
とにかく、歴史的事実も、バーナムの人物象も、捻じ曲げてしまっているのが『グレイテスト・ショーマン』という作品です。
バーナムは悪人か?
P・Tバーナムいい人に描くために、様々な事実を捻じ曲げている『グレイテスト・ショーマン』。
先述の通り、当時のアメリカは南北戦争の時代で、黒人差別が色濃かったのです。
映画では、オーディションで役者と出会ったような演出になっていますが、P・Tバーナムも、本当は奴隷として色んな人を買っています。
そして、宣伝のための誇大広告については、結構えぐいこともやってます。
例えば、ジョージ・ワシントンの元乳母で160歳を超えているとの評判があった黒人奴隷の女性をそのまま宣伝し、嘘だろうと言われた末に、その女性を公開解剖したんです。ゾッとしますよね。
結果、80歳くらいだろうとわかったら「騙されたー!」って感じでとぼけるんです。
これは映画にも登場しましたが、もともと太ってる人に肉襦袢を着せたり、もともと背の高い人を竹馬に乗せたりと、嘘ばかりついていたんです。
今だと、人権侵害になっちゃいますよね。
その他にも裁判沙汰になることまで何度かあったそうですが、
バレても、「騙されたー」って誤魔化すんです。
彼の有名な言葉に「カモは毎分生まれてくるさ」というものがあります。
嘘ついたって、誇大広告だって、カモはたくさんいるんだから大丈夫さって、ところですね。
『グレイテスト・ショーマン』のヒットの理由は?
しかしながら、『グレイテスト・ショーマン』はヒットしましたし、今なお大変人気のある作品です。
その理由はやはり、歌の素晴らしさでしょう。
『アナ雪』や『ラ・ラ・ランド』で楽曲を手掛けた人たちが関わっているので、音楽は極上です。
特に、キアラ・セトルの「This Is Me」のパワフルさは鳥肌もの。
多様性、ダイバーシティを唄ったものなので、歌詞もめちゃくちゃいい。
私も大好きな曲です。
あと、ゼンデイヤの空中ブランコはCGなしで本人が演じているので、あのシーンも素晴らしいですね。
バーナムは善人か?
さて、前々項でバーナムの悪いことをたくさん書いてきましたが、はたして彼は本当に悪人だったのかというと、そうでもありません。
劇中での新聞記者との会話で、偽物だペテンだと言われたバーナムがこう返します。
「このショーを楽しみに来てるお客さんたちの笑顔は偽物かい?」
P・Tバーナムという人物は、兎にも角にもショーマンだったのではないでしょうか。
名声よりもお金よりも、とにかく人を驚かせたい、楽しませたい、そんな気持ちで溢れた人物だったのかもしれません。
実際、破産しちゃってますしね。
彼が破産した時に、金を貸したのは、実際は親指トムなんです。
P・T・バーナムは金の管理を上手くできないけど、親指トムはバーナムに稼がせてもらった金をキチンと蓄えていたんですね。
バーナムは、金払いはめちゃくちゃよかったんですよ。
そういう意味では障害者や奴隷を救い出したともいえますし、P・T・バーナムは人を差別するような心は持っていなかったかもしれません。
身体に障害がある人は奴隷として買われず、生活が厳しかった人も多いんです。
バーナムのもとで芸を覚え、その後も生活に困らなかった人もいる。劇中で描かれなかった小頭症の役者なんかはまさしくそれです。
結合双生児や小頭症の人たちが福祉のない当時のアメリカで幸せに暮らしたのは、バーナムに出会えたからかもしれませんよね。
そのあたりの、バーナムの偉大さまで描いていれば、『グレイテスト・ショーマン』はもっと高く評価を受けたのではないかと思います。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『グレイテスト・ショーマン』について解説しました。
批評家からは嫌われましたが、バーナムについて知ると見え方が変わってきますね。
音楽はとにかく素晴らしいよ!
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