SORCERERはいったい何を意味するか
映画「恐怖の報酬」を鑑賞しました。
1977年、フリードキン版です。
私は本作をずっと観てみたかったのですが、なかなかタイミングが合わず、鑑賞を見送っていました。
しかし、つい先日、間もなく閉館となる京都みなみ会館にてリバイバル上映されることを知り、加えて8月7日にフリードキン監督の訃報が。
訃報も、閉館も、残念だねぇ。
もう、これは観に行くしかないでしょうということで、観に行ってきました。
作品概要
簡単にあらすじやタイトルについて解説するよ。
作品概要: 1977年のアメリカ映画。 監督は「エクソシスト」「フレンチ・コネクション」で知られるウィリアム・フリードキン。 1953年に公開された作品のリメイク版。 STORY: ベネズエラのポルベニールに流れ着いた、爆破犯、強盗、詐欺師、ヒットマン。 彼らは、油田の火事を止めるべく、ニトログリセリンを300マイル先まで届けるドライバーに志願する。 わずかな衝撃でも、爆発してしまうニトログリセリン。ジャングルや吊り橋などの悪路の中運ぶミッションは、果たして…。
制作費2200万米ドル
「恐怖の報酬」は2200万米ドルという、当時としては破格の制作費をかけて作られました。日本円で100億円くらいでしょうか。
同年公開の映画はこんな感じ👇
スターウォーズ | 1100万ドル |
サタデーナイトフィーバー | 350万ドル |
イレイザーヘッド | 10万ドル |
極端な例ではあるし、「未知との遭遇」あたりも同じくらいの金額ではあるんですが、まあとにかくかなりの金額がかかっています。
その理由は、観ればわかりました。
爆破・吊り橋の特撮
まず、この映画には大量の火薬が使われていることがわかります。
油田のシーンの迫力はもの凄いし、その至近距離をヘリコプターが舞うのも凄い。
さらに、大木を吹き飛ばすシーンも、かなりの迫力。
また、この映画で最も有名であろう、吊り橋を渡るシーン。
もう、手に汗握るとはあのことですよ。
今ではこういった過激なシーンは、CGで見せてしまうことが多いでしょう。(トム・クルーズの映画は別として)
でも、ちゃんと撮ってるからこそ、伝わってくる緊張感というか、ドラマがありますよね。
公開当初は大失敗だった
「恐怖の報酬」は、公開当時はかなり不振でした。
というのも、公開年である1977年は「スターウォーズ」が初公開された年なのです。
世間は「スターウォーズ」や「未知との遭遇」のようなSF作品に興味津々だったんですね。
(その理由からか、「サスペリア」も大失敗しています)
また、それに加えて、当時の映画ファンは原作至上主義的な側面が非常に強く、リメイクである「恐怖の報酬」はなかなか認知されなかったみたいです。
30分カットされ…
本作は30分カットして公開され、結果的には大失敗となってしまいました。
それもそのはずですよね。
あの映画のどこに30分もカットするところがあるんだろう。
しかもラストシーンまで変わっているそうですよ。
あの切なさがないと…ねぇ。
4K版公開
そして、月日は流れ、様々な権利関係を整理し、フリードキン監督自身の手で、4Kデジタルリマスター完全版が公開されました。
同年のヴェネツィア国際映画祭を皮切りに、世界中の映画館で上映されることに。(日本では2018年)
世界中で本作が再び日の目を浴び、高い評価を獲得するに至ったのです。
映画って、わからないもんですね。
随所に見られる名ショット
フリードキン監督の作品は、
うわぁ、カッコいい…!
と感じるショットがたくさんあります。
「エクソシスト」のようなオカルト作品でもです。(ベッドでリンダブレアが膝立ちし、後ろにパズズが映るシーンに惚れ惚れします)
「恐怖の報酬」でももちろんカッコいいショットはたくさん。
トラックの点検・修理のシーンでは、音楽に合わせてヘッドライトがつくんですが、これが痺れるほどいい。(ちなみに私は赤いトラック派)
吊り橋のシーンもたまらないし、大木の前で男らが茫然とするショットもいいですよねぇ。
SORCERERとは
本作の原題は「SORCERER」です。ソーサラーと読みます。
これは、運命を引くものという意味や、悪い魔法使いを表す言葉です。
運命を引くものというのは、しっくりきますね。
ニトログリセリンを車で運ぶ本作にぴったりです。
でも、私は、後者の悪い魔法使いの方も意味も込められていると考えます。
本作の冒頭では、何かの顔を模した石像が出てきます。(ストーリーのちょうど半分でも再登場)
「エクソシスト」でもそういうの出てきますよね。
その石像の見た目と、赤いトラックの見た目がとてもよく似ているんです。
そして、このトラックにはSORCERERという名前がつけられています。
このトラックに乗るのは、フランスで詐欺をしたセラーノと爆破犯マルティネスです。
セラーノは出発前に、飲み屋の女性店員から、十字架を渡されます。
彼がキリスト教信者であることを表すために撮られたシーンでしょう。
そして彼らのトラックは途中転落してしまうと。
フリードキン監督はユダヤ教なので、これらのシーンにおいて、キリスト教に対する想いのメタファーを込めているのだと考えます。
キリスト教の教会で強盗するシーンもありますしね。
「エクソシスト」にも同じような仕掛けがありますので、ぜひこちらを👇
ブロディ署長が犯罪者を
本作のメインアクターはロイ・シャイダー。
彼はあの「JAWS」でブロディ署長を演じた俳優です。
今度はアメリカで教会からお金を強奪するマフィアを演じています。
ブロディ署長の柔和な雰囲気とは打って変わって、ピリッとした演技でカッコいいです。
でも、個人的にはイスラエルの爆破犯、マルティネスが一番好きなキャラクターでした。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「恐怖の報酬」、とにかくフリードキン監督の情熱や思いがこもりまくった傑作です。
フリードキン監督自身も、最高傑作だと評価しているらしいね!
ご冥福をお祈りしつつ、これからもフリードキン監督の映画を楽しませていただきます。
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コメント
フリードキン亡くなってしまいましたね。
いろいろ言われますけど、残した作品はとても印象深いです。
ご冥福をお祈りします。
https://dalichoko.muragon.com/entry/1098.html
ダリチョコさま
コメントありがとうございます😊
本当にたくさんの名作を残してくださいましたね。
心から感謝です。