映画『シェイプ・オブ・ウォーター』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。
『パンズラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督によるファンタジー作品です。
デル・トロ監督っていうことは…。
もちろん、クリーチャーが出てきます。
本作は、ドラマとしてもかなり感動的ですし、こういったモンスターが出てくる作品で、アカデミー賞同年最多の全13部門にノミネートされ、作品、監督、美術、音楽の4部門を受賞したという点も、また泣けます。
オタク心をくすぐりますし、いろいろな映画の作り手に勇気を与えたはずです。
今回の記事では、そんな映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の見どころを解説していきます。
1962年、アメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザはある日、施設に運び込まれた不思議な生きものを清掃の合間に盗み見てしまう。“彼”の奇妙だが、どこか魅惑的な姿に心を奪われた彼女は、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。幼い頃のトラウマからイライザは声が出せないが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。次第に二人は心を通わせ始めるが、イライザは間もなく“彼”が実験の犠牲になることを知ってしまう。“彼”を救うため、彼女は国を相手に立ち上がるのだが――。
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/shape-of-water
The Othersの逆襲劇
本作の舞台は1962年、東西冷戦下のアメリカ・ボルチモアです。
しかし、デル・トロ監督は、これは現代の映画でもあると言っています。
2017年、つまりトランプ政権時代のアメリカですね。
本作は裏メッセージとして、トランプ政権批判を伝えています。
リチャード・ストリックランドという登場人物と、トランプを重ねているんですね。
トランプといえば、白人至上主義。
差別的な発言をしたって、許されてしまう、そんな人物ですよね。
『シェイプ・オブ・ウォーター』では、半魚人を救うために、社会的弱者が協力して立ち向かいます。
デル・トロ監督はこれらの社会的弱者を「The Others」と形容しています。
『シェイプ・オブ・ウォーター』はこの『The Others』たちの逆襲の話なんだそうです。
本作に登場する掃除係は、みんな黒人かラティーノ、あるいは主人公のような障害者なんです。
どうして極秘施設にそのような人々を働かせていたかというと、人間だと思われていなかったからなんですね。
南北戦争時代は人間だと思われていなかったという差別の歴史を描いているのです。
南北戦争時代の差別についてはこちらで詳しく解説しています👇
1962年当時も、アメリカ人=白人のような文化で、白人至上主義だったんですね。
ちなみに、主人公のお隣さん。彼はゲイなんです。
1962年は、ゲイも徹底的に人権がありませんでした。警察官がゲイバーに入って、ゲイの人たちをボコボコにしているような時代です。
トランプ政権下において、またそんな時代が来てしまうのではないかということを危惧して、デル・トロ監督はこの作品を創ったんですね。
トランプ大統領が再選しそうな今、改めて観ておきたい作品なのではないでしょうか。
『美女と野獣』の不満と怒り
デル・トロ監督は、『美女と野獣』や『大アマゾンの半魚人』っていうユニバーサル映画を見て、本作の着想を得たそうです。
『大アマゾンの半魚人』は1954年の映画なんですが、有名な半魚人の第一作なんです。
アマゾンにアメリカ人の探検隊が行って、そこに半魚人が住んでいるんですが、たった1人、生き残った半魚人がいた。
それが探検隊が連れてきた女性に恋をしちゃうんです。
ところが、その探検隊は最後、その半魚人を殺して話が終わっちゃうんですね。
現代の視点から考えるとおかしな話だと思いませんか?
勝手にアメリカ人が行って、アマゾンでそこに住んでいる原住民を殺している話なんですよね。
それを正義として描いていると。
デル・トロ監督はメキシコ人なので、見る時は南米側の人の気持ちになったのでしょう。
だから、デル・トロ監督は、なんと6才の時に、探検隊のジュリー・アダムスさんっていう女優さんと半魚人が駆け落ちする漫画を書き始めたそうです。
また、デル・トロ監督は『美女と野獣』はテーマが歪んでいるんだとも言っています。
野獣の姿で、女性は好きになったのに、最後はイケメンの王子様にもどりますよね。
言われてみれば、これって何か違いますよね笑
野獣の姿で心を好きになったんだから、そのままでいいじゃんって。
だから、デル・トロ監督はちゃんとテーマ通りに作ったのが本作なんですって。
『シェイプ・オブ・ウォーター』っていうのは「水の形」っていう意味です。
たとえば「形のないものっていうものが実は大事なんじゃないか?目に見えないものが大事なんじゃないか?」って言いたいんですね。
愛には形がないわけですよね。
この半魚人と主人公のイライザは目に見えない美しさがあるわけなのです。
デル・トロらしさが詰まっている
製作、つまりお金を出すのもデル・トロ監督だったので、自由度が高く作ることができています。
『クリムゾン・ピーク』では、宣伝から撮影まで、縛りが多かったらしいです。
『シェイプ・オブ・ウォーター』は、キャストもそこまで豪華ではありませんよね。ヒロインが40代の女性なんて、ハリウッドの大物プロデューサーがついたら、なかなか実現できないと思います。
『美女と野獣』なんて、エマ・ワトソンですもんね。
だからこそ、社会問題やトランプ政権への批判的なメッセージを込めて作ることにも成功しているんでしょう。
映画館の上に住んでるというのもデル・トロらしいですし、主人公の朝の日課がオ〇ニーであるとか、隣人がカツラを被っているとか、そのへんの設定もデル・トロらしくて最高です。
ラストの解釈
一応最後に、考察的な内容も。
ラストシーンで、主人公は半魚人と共に海に落ちます。
そして、首筋にあった傷が、エラのようになり、蘇生する。
そうして映画の幕は閉じます。
あれは、元々主人公は人魚だったという解釈ができますね。
人魚姫のプロットも、足を得る代わりに、声を失うというものでした。
そんな、人魚姫の後日譚的な解釈をしても面白いでしょう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の見どころを解説しました。
素晴らしい作品です。ぜひ解説を読んだ後にもう一度鑑賞してみてほしい!
今ならAmazon Prime Videoで観られるよ。
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