名作『ひまわり』は今こそ観たい1本

映画

“ひまわり”が意味するものとは

映画『ひまわり』。

ヴィットリオ・デ・シーカの代表作で、1970年と古い作品ですが、ロシアウクライナ戦争の只中において、再び注目が集まっています。

2022年にはレストア版が、全国のスクリーンで上映され、さらにまた、2024年にも「午前十時の映画祭」上映されます。

bitotabi
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確かに、今こそ観るべき作品なんです。

ダニー
ダニー

どうしてなの?

 

STORY:

第二次世界大戦下、陽気なアントニオ(マストロヤンニ)と結婚したナポリ女のジョバンナ(ローレン)は、夫を戦争に行かせないために狂言芝居までするが、アントニオは地獄のソ連戦線に送られてしまう。

終戦後も戻らない夫を探すために、ジョバンナはソ連に向かい夫の足跡を追う。しかし、広大なひまわり畑の果てに待っていたのは…

ひまわり 50周年HDレストア版公式サイトより引用

映画を知るための解説

監督は、ヴィットリオ・デ・シーカ。

ネオリアリズム映画の巨匠として知られています。

彼の作品は、戦後のイタリア社会をリアルに描いたものが多く、他の作品では『自転車泥棒』(1948)や『靴みがき』(1946)などが有名。

結構きついんですよ。この辺の映画。救いがなくってやりきれないというか。とことん当時の現実を描いてて。

しかし、キャリア後半はコメディ路線へ。

ソフィア・ローレンと、マルチェロ・マストロヤンニの名コンビによる『昨日今日明日』(1963) 、『ああ結婚』(1964)などでコメディ路線の映画がヒットします。

そして1970年に公開された本作『ひまわり』は、その集大成的な作品となっており、社会派のネオリアリズモと、コメディの合体作品なんです。

前半はコメディ調で、後半は戦争ドラマになっているんですね。

当時のイタリアには、とっても人情的な法律があったんですよ。

結婚したら2週間ハネムーンとして戦争に参加しなくていいという。

前半ではそのあたりのシーンをコミカルに描いています。

でも、後半ではやっぱり戦争に行かなければならない。心や身体に傷を登場人物たちをリアルに描いているんです。

撮影当時は、ソ連は鉄のカーテンと呼ばれ、冷戦真っ只中だったんですが、それを越えてイタリアからソ連で撮影したのはすごいことだと思います。

ちなみに、ひまわり畑はウクライナで撮影されています。

あと、本作で見逃せないポイントが、音楽を担当したのがヘンリー・マンシーニであるというところ。

『ピンクパンサー』や『ティファニーで朝食を』があまりにも有名ですね。

美しいメロディーは、それだけで泣けます。

 



ひまわりが意味するもの

bitotabi
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ここで映画を象徴する「ひまわり」について解説を🌻

ひまわりはソ連を象徴する花でした。

世界で先駆けて、種を使って油をとって工業製品にし、産業として成功したんです。

劇中に出てくるひまわり畑のある場所の下には、イタリアやロシアの兵士たちの死体が埋まっているんですよね。(へルソン州という場所)

でも、民間人も埋まっているんです。スターリンの粛清によって。

それらが、花を咲かせているんです。

そういったソ連の歴史を物語るためにひまわりを使ったというのがひとつと、

戦争で闘って男が死んでも、女性はそこに根を張って太陽の方を向いて生きているという比喩も込められているような気がします。

戦争の悲しさという点では、墓地のシーンも強烈。

ちょっとした豆知識

ちなみに、本作では「カチューシャ」という名前の少女が登場します。

カチューシャって、実はロシアではよくある名前なんだそうです。

大正時代の人気女優、松井須磨子が『復活』という舞台公演でカチューシャという役を演じた際に、あの髪留めを頭につけていたそうで。

その姿から「カチューシャ」という名称が定着したんだとか。

 



特に大賞を獲っていない理由

私はヴィットリオ・デ・シーカの作品の中なら『ひまわり』が一番優れた作品だと思うんですよ。

でも、この作品は特に大きな賞を獲ってないんですよね。

その理由は大きく2つあるのかなと。

1つは、センシティブな内容。この映画は戦争の悲劇とその影響を描いていますよね。

特にソ連とイタリアの関係を背景にしています。こういったテーマは、当時の国際情勢や政治的な理由から、賞を受けにくかった可能性があるんですね

2つ目は、若干時代遅れだったのかもしれません。

1970年代初頭の映画界は、革新的で新しいスタイルやテーマが注目されていました。

『イージー・ライダー』に代表されるアメリカン・ニューシネマの兆しです。

例えば、『フレンチ・コネクション』や『真夜中のカーボーイ』などの作品は、リアルで生々しい描写や社会的なテーマを取り上げており、観客や批評家から高く評価されました。

一方で、『ひまわり』は戦争の悲劇とその影響を描いた感動的なドラマであり、伝統的なスタイルを持っています。そのため、当時の映画界のトレンドとは少し異なる方向性だったかもしれません。

bitotabi
bitotabi

とはいえ、当時のイタリア映画としては異例の大ヒットだったんですけどね。特に日本では洋画興行収入ランキングで5位になったくらいです。(1位は続・猿の惑星)

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

『ひまわり』の時代背景や、タイトルの意味、豆知識を解説しました。

bitotabi
bitotabi

前半後半の緩急がまた、辛いんですけど、本当にいい作品です。

ダニー
ダニー

大切なメッセージがこもっているよね…。

 

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