映画「灼熱の魂」を鑑賞しました。
『DUNE/デューン 砂の惑星』『ブレードランナー2049』『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の出世作です。
国内の紛争を描いた、非常にシリアスなヒューマンドラマです。
国の歴史や登場人物など、予備知識必須な作品ですが、この記事を読めば大丈夫です!
双子のジャンヌとシモンの母・ナワルは、遺言の手紙を残しこの世を去る。手紙はその存在を知らされていなかった父と兄に宛てられた物だった。ジャンヌとシモンは、父と兄を探して母親の祖国を訪れるが、ふたりはそこで母を襲った凄惨な過去を知るのだった。
少年の瞳
今作のOPには、複数の少年たちが、頭を剃られるシーンから始まります。銃を構えた男に囲まれながら。
やがて、カメラは一人の少年へ寄っていく。
少年は、恨みとも憎しみとも哀れみとも取れる、何とも言えない表情でこちらを見つめます。
このシーンに心を奪われるとともに、どのようにこのシーンが物語に絡んでいくのか、気になって仕方がなく、集中を余儀なくされます。
見事なオープニングであり、とても重要なシーンです。
この映画は、1秒たりとも遅れてはいけません。
強烈なポスターが物語るのは
また、このリバイバルにあたって、新たに制作されたポスター。
真っ赤な背景に、黒い文字はインパクト大。
このポスターで唯一挿入されたイラストが、煙を上げるバスと、そばで座り込む女性。
このシーンもまた、ストーリーにどのように関わってくるのか、恐いもの見たさで知りたくなりませんか?
チャプターごとのタイトル
今作は、チャプターごとにタイトルが設けられています。
登場人物名や、土地名がほとんどなのですが、これ、絶妙にわかりません笑
私が分かった範囲で、簡単にチャプターの名前を整理しておきます。
「双子(兄妹)」「ナワル(母)」「ダレシュ(地名)」「デレッサ(地名)」「クファリアット(施設名)」「ニハド(人名)」「シャムセディン(人名)」
全ては網羅できていないですが、おおよそこんな感じです。
せめて人名だけでもぼんやり意識しておけば、物語がインプットしやすいはずです。
舞台はどこ?
上記の「ダレシュ」などの地名は、全て架空のものとなっていますが、今作で取り扱われている紛争は、レバノンの内部紛争で間違いありません。原作の劇作家もレバノン出身です。
1975年、キリスト教勢力とアラブ人のPLOの衝突。 シリア、イスラエルが介入して国際的紛争となり、1990年まで続いた。 1975年4月13日に、レバノンのキリスト教勢力(マロン派)とパレスチナ解放機構(PLO)を主力としたアラブ人との内戦。
参考:世界史の窓
日本人には理解しがたい、宗教対立の激しさが描かれる今作ですので、ある程度知識を身に着けてから鑑賞するとより面白さが増すはずです。
また、「シリア社会民族党」という過激派組織や、「南レバノン問題」についても押さえておくと深い学びに繋がります。
レバノンは移民受け入れ世界一
作中で、何度も登場する「移民」という言葉も、レバノンという国や歴史的背景を押さえておかなければ、映画の意図するところがわかりにくいです。
1943年にフランスから独立したレバノンでは、イスラム教やキリスト教の諸宗派が混在しており、宗派間での紛争が長年繰り返されてきました。1948年にイスラエルが建国されると、隣国ヨルダンから多数のパレスチナ人が流入し、難民キャンプが設立されました。後にこのキャンプはパレスチナ解放機構(PLO)などのパレスチナ武装組織の活動拠点として利用されていたと言われています。
https://www.worldvision.jp/children/crisis_22.html
1975年、キリスト教徒の一派がパレスチナ人の乗ったバスを襲撃した事件をきっかけに宗派間対立が激化したことで、15年間におよぶ内戦に突入しました。1976年にはシリア軍がPLOへ越境攻撃を行い、1978年にはイスラエル軍がPLO掃討のためにレバノンへ進攻しました。これ以降、イスラエルは南レバノンを占領し、2000年にようやく撤退しましたが、現在もレバノンとイスラエルの間には国境線の画定などの課題が残されています。
こういった歴史的背景や、宗教的な絡みで、レバノンでは今なお大量の難民を受け入れています。
48万人と言われるその数は、なんと国民の8人に1人です。
親のことをどれだけ知っているか
私はこの映画を観て、
「私も自分の父と母や、その親の若かった頃のことって、ほとんど知らないなあ」と思いました。
もしかすると、自分の想像を絶する、波乱万丈な出来事があったりして…。と少し怖くなりました。
勇気を出して、聞いてみるのも、いいかもしれません。いや、この映画を観た人なら、聞かないかもしれませんが…。
1+1=1の意味
こちらはかなりネタバレになりますので、鑑賞した後にわからなかった人はお進みください。衝撃強いです。
↓↓↓↓
それでは参ります。
下記ネタバレです。
端的に言えば「1+1=1」というのは、探していた父と、兄は同一人物だったということです。
幼くして離れ離れになってしまった息子こそが、自身を襲った拷問官であった事実を、プールサイドで知り、お母さんは放心してしまったという訳です。
何と惨いストーリーでしょうか…。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
宗教対立や、カナダ・フランス・レバノン及び中東の予備知識がやや必要な映画ですが、恐ろしくよくできたストーリーです。ぞっとしました。
この記事を読んでから観れば、9割以上は理解できます!
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