映画には、観る者の心を揺さぶり、勇気を与えてくれる様々なテーマが存在します。
その中でも、特に人々の胸を熱くさせるのが、「アンダードッグスピリッツ」を描いた作品群ではないでしょうか。
私はもう本当にこの手の映画が大好物なんです。

そもそも「アンダードッグスピリッツ」ってなんなの?犬の映画?

簡単に言うと、逆境に置かれた人が不屈の心で闘い、勝利を目指すような、そんな話だよ。
まずはそのあたりをもう少し詳しく解説していこうか。
そして、最後にオススメ作品を5つ紹介します。
アンダードッグスピリッツとは
「アンダードッグスピリッツ」とは、一般的に不利な状況や逆境に置かれた人物や集団が、不屈の精神、努力、そして信念によって、周囲の予想を覆し、成功や勝利を掴み取る姿勢や精神性を指します。
スポーツの世界における弱小チームの快進撃、社会的なマイノリティが偏見や差別を乗り越えて自己実現を果たす物語、あるいは、個人的な困難に立ち向かい、自身の限界を超える挑戦など、その形は様々です。
映画においてアンダードッグスピリッツは、観客に希望や感動を与え、共感を呼ぶ普遍的なテーマとして、長きにわたり愛されてきました。

なぜ私たちはアンダードッグの物語に惹かれるのか
アンダードッグの物語が私たちの心を強く惹きつけるのは、そこに普遍的な人間の願望や感情が映し出されているからでしょう。誰もが人生において、困難や挫折を経験します。社会的な立場、経済的な状況、あるいは才能の有無など、様々な要因によって、私たちは時に「弱者」の立場に置かれることがあります。
アンダードッグの物語は、そのような状況に置かれた主人公たちが、諦めずに立ち向かい、自身の可能性を信じ、努力を重ねることで、周囲の予想を覆し、成功を掴み取る姿を描きます。その過程で描かれる苦悩や葛藤、そしてそれを乗り越える強さは、観る者に勇気を与え、「自分にもできるかもしれない」という希望の光を灯してくれるのです。
また、アンダードッグの物語は、単なる成功譚に留まりません。真のアンダードッグスピリッツが描かれた作品は、結果だけでなく、その過程における主人公の成長や変化、周囲の人々との絆、そして何よりも「諦めない心」の尊さを教えてくれます。私たちは、スクリーンの中の彼らの姿に、自身の経験や理想を重ね合わせ、共感し、感動するのです。
おすすめのアンダードッグスピリッツ映画5選
それでは、数多くのアンダードッグスピリッツ映画の中から、特に印象深く、観る者の心を揺さぶる5つの作品を厳選してご紹介いたします。
1. 不屈の魂が奇跡を起こす!映画史に残る金字塔『ロッキー』(1976年)

アンダードッグスピリッツ映画の代名詞とも言えるのが、シルベスター・スタローン主演・脚本の『ロッキー』です。フィラデルフィアの下町に住む三流ボクサー、ロッキー・バルボアが、ひょんなことから世界ヘビー級チャンピオン、アポロ・クリードとのタイトルマッチのチャンスを得ます。周囲は誰もロッキーの勝利を信じていません。彼は文字通りの「アンダードッグ」でした。
しかし、ロッキーはただの挑戦者としてリングに上がるのではありません。「最後まで立っていられれば、それは勝利だ」と語る彼の目標は、勝利そのものよりも、自分の限界を超え、最後まで戦い抜くことでした。トレーニングに励む姿、恋人エイドリアンとの不器用ながらも温かい交流、そして何よりも、強大なチャンピオンに臆することなく立ち向かう彼の姿は、観る者の胸に深く刻まれます。
ラストの試合結果は、必ずしも誰もが期待するものではないかもしれません。しかし、ボロボロになりながらも最後までリングに立ち続けたロッキーの姿は、真の勝利とは何かを私たちに問いかけます。彼の不屈の魂こそが、この映画を時代を超えて愛されるアンダードッグスピリッツ映画の金字塔たらしめているのです。
2. 社会の底辺から這い上がる人々の悲哀と希望を描く『波止場』(1954年)

マーロン・ブランドがアカデミー主演男優賞を受賞した名作『波止場』も、アンダードッグスピリッツを描いた重要な作品です。舞台はニューヨークの港湾。元ボクサーのテリー・マロイは、港湾労働者たちのボスである兄チャーリーの言いなりになり、不当な労働条件や不正を見て見ぬふりをしています。
しかし、正義感の強い神父や、不正を告発しようとした男の妹イーディとの出会いをきっかけに、テリーの心は揺れ動き始めます。彼は、組織の圧力や脅迫を受けながらも、真実を語り、不正に立ち向かうことを決意します。
テリーは、社会の底辺で生きる孤独な男です。かつては有望なボクサーでしたが、兄の策略によってキャリアを潰され、後悔と自責の念に苛まれています。そんな彼が、自身の良心に従い、強大な力に立ち向かう姿は、まさにアンダードッグの魂そのものです。ラストシーンで、傷つきながらも毅然と立ち上がるテリーの姿は、観る者に深い感動と希望を与えます。ちなみに、映画『ロッキー』の脚本を執筆したシルベスター・スタローンは、『波止場』のマーロン・ブランドの演技や、社会の底辺に生きる男の葛藤から大きな影響を受けたと語られています。
3. 笑いと感動で包む、実話に基づいた奇跡の物語『ネクスト・ゴール・ウィンズ』(2023年)

タイカ・ワイティティ監督が、実話に基づいて描いた『ネクスト・ゴール・ウィンズ』は、一風変わったアンダードッグスピリッツ映画です。2001年、FIFAランキング最下位のアメリカ領サモア代表サッカーチームは、オーストラリアに0-31という歴史的大敗を喫し、失意の底にいました。そんな彼らを立て直すために派遣されたのが、落ち目のオランダ人コーチ、トーマス・ロンゲンでした。
トーマスは、規律もなく、やる気も感じられない選手たちに手を焼きながらも、彼らの隠れた才能と情熱を見出し、チームを一つにまとめ上げていきます。ワールドカップ予選で一勝を目指す彼らの道のりは、決して平坦ではありません。様々な困難や挫折を経験しながらも、彼らは互いを信じ、ひたむきにボールを追いかけます。
この映画の魅力は、シリアスなテーマの中に、ワイティティ監督ならではのユーモアが散りばめられている点です。選手たちの個性的なキャラクターや、トーマスの型破りな指導方法が笑いを誘いながらも、彼らが目標に向かって成長していく姿は、観る者の心を温かくします。勝利至上主義ではない、純粋なスポーツの喜びや、仲間との絆の大切さを教えてくれる、感動的なアンダードッグストーリーです。
4. 逆境を乗り越え、夢を追いかける情熱『チームジンバブエのソムリエたち』(2017年)

『チームジンバブエのソムリエたち』(原題:Blind Ambition)は、経済危機や社会不安といった困難な状況にあるジンバブエから、南アフリカで開催される世界ブラインドテイスティング選手権に初めて出場した4人のソムリエチームの挑戦を描いたドキュメンタリーです。ワインに関する知識も十分にない環境の中、彼らは独学と持ち前の情熱、そして固いチームワークを武器に、ワインの本場から来た強豪たちに立ち向かいます。
彼らのひたむきな努力、想像もつかない困難を乗り越えるための工夫、そして祖国ジンバブエへの誇りを胸に世界に挑む姿は、観る者に深い感動と勇気を与えます。ワインの知識がなくても、彼らの人間ドラマに引き込まれ、その奮闘に心を揺さぶられるはずです。まさに、アンダードッグが不可能に挑む姿を描いた、力強い作品です。
5. どん底から希望を見出す夫婦の物語『浮き雲』(1996年)

アキ・カウリスマキ監督の『浮き雲』(原題:Kauas pilvet karkaavat)は、1990年代のフィンランドを舞台に、不況によって職を失った夫婦の苦難と、それでも諦めずに生きていこうとする姿を描いた作品です。イルマリとラウリは、それぞれレストランのウェイターとトラムの運転手として慎ましいながらも幸せな生活を送っていました。しかし、突然の不況により、二人は同時に職を失ってしまいます。
職探しに奔走する日々、経済的な困窮、そして精神的な疲弊。夫婦は様々な困難に直面しますが、お互いを支え合い、決して希望を失いません。小さなアパートで質素な生活を送りながらも、二人はいつか自分たちのレストランを持つという夢を諦めずに、できることから少しずつ前進しようとします。
カウリスマキ監督独特の乾いたユーモアと、登場人物たちの寡黙な佇まいの中に、彼らの強い意志と愛情が滲み出ています。華やかな成功物語とは異なりますが、この作品は、社会の片隅で生きる人々が、困難な状況の中でも尊厳を保ち、ささやかな希望を胸に生き抜こうとする姿を通して、力強いアンダードッグスピリッツを描き出しています。
アンダードッグスピリッツ映画が私たちにくれるもの
今回ご紹介した5作品は、時代もジャンルも異なりますが、それぞれが異なる形でアンダードッグスピリッツを描き出し、観る者の心に強い印象を残します。
『ロッキー』は、不屈の精神と自己肯定感の大切さを教えてくれます。『波止場』は、社会の不正に立ち向かう勇気と、良心の呵責に苦しみながらも真実を追求する人間の強さを描きます。『ネクスト・ゴール・ウィンズ』は、困難な状況でも諦めずに目標に向かうことの素晴らしさと、ユーモアを交えた人間ドラマの温かさを伝えてくれます。『チームジンバブエのソムリエたち』は、逆境を乗り越え、情熱とチームワークで不可能に挑む人々の姿に、深い感動と勇気を与えてくれます。そして、アキ・カウリスマキ監督の『浮き雲』(1996年)は、社会の片隅で生きる夫婦が、困難な状況でも希望を失わずに生きていく姿を通して、静かに、しかし力強くアンダードッグスピリッツを描き出しています。
これらの映画に共通するのは、主人公たちが決して恵まれた状況にいるわけではないということです。むしろ、多くの困難や逆境に直面しながらも、彼らは諦めずに立ち上がり、自身の可能性を信じて行動します。その姿は、観る者に勇気を与え、「自分も頑張ろう」という前向きな気持ちにさせてくれるでしょう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
アンダードッグスピリッツ映画は、単なるエンターテイメントとしてだけでなく、私たち自身の人生を振り返り、困難に立ち向かうための力を与えてくれる、かけがえのない存在と言えるでしょう。
もし、あなたが今、何かに立ち向かおうとしている時、あるいは、少し心が疲れていると感じている時、ぜひこれらの映画を手に取ってみてください。

きっと、スクリーンの中の主人公たちの魂の叫びが、あなたの心に深く響き、新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。

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