一生って、それほど長いものなのかね
映画『友だちのうちはどこ?』をアマゾンプライムビデオで鑑賞しました。
本作は、1987年のイラン映画です。
監督は、アッバス・キアロスタミ。
2016年に亡くなった、イラン映画の巨匠です。
友だちの大切なノートを間違えて持ち帰ってしまった少年が、ノートを返すため友だちの家を探し歩く姿を生き生きと活写し、アッバス・キアロスタミ監督の名を世界に知らしめたイラン映画。イラン北部にあるコケール村の小学校。モハマッドは宿題をノートではなく紙に書いてきたため先生からきつく叱られ、「今度同じことをしたら退学だ」と告げられる。しかし隣の席に座る親友アハマッドが、間違ってモハマッドのノートを自宅に持ち帰ってしまう。ノートがないとモハマッドが退学になると焦ったアハマッドは、ノートを返すため、遠い隣村に住む彼の家を探し回るが、なかなか見つけることができず……。
https://eiga.com/movie/47278/
私はイラン映画がかなり好きです。
どうしてどうして?アメリカや日本の映画に比べると地味だよね?
確かに、等身大の人間ドラマがほとんどだけど、イラン映画には、ある理由から社会的なメッセージが、どの作品にも隠されているんだよ。それを汲み取るのが面白いんだ。
ある理由
イランでは、今なお映画を始めとした芸術には厳しい検閲がなされています。
国家に対し、反逆的な要素が少しでもあれば、公開はおろか捕まってしまうんです。
『熊は、いない』のパナヒ監督はまさにそういう状況です。
こういったことを文化統制といいます。
イランではイスラム革命後の1979年から、今になってもまだ文化統制は続いているんです。
そのため、映画監督たちは、表面上は分からないようにして、社会的なメッセージを作品の中に隠して公開しています。
『友だちのうちはどこ?』は、「子どもの映画ならOK」と政府から言われたから作った作品だそうです。
これはスペインの名作『ミツバチのささやき』と同じですね。
体制批判のメッセージ
『友だちのうちはどこ?』には政府の体制批判的なメッセージが隠されています。
もちろん、表面上は分かりません。
紐解く鍵としては、「鉄」「扉」「大人」を注視して観るとよいでしょう。
鉄の性質の国家政策のもと、イスラム共和制に移行したイラン=イスラム革命。
イラン=イスラム革命前のパーレビ王政時代のイランは、中東一の親米国で、西洋化が進み、服装なども自由でした。
そこから取り残された人々や、変わってしまった人々をひっそりと描いているんです。
『友だちのうちはどこ?』には、「扉」や「窓」 がたくさん出てきます。
鉄製の扉商人のおじさんと、木製の扉職人だったおじいさんは、イラン=イスラム革命前後の対比なんですね。
おじいさんが階段を登りながら言うセリフは、かなり印象的です。
「鉄の扉は一生壊れないんだと。一生って、そんなに長いのかね」
「先に行きなさい わしは疲れた」
「わしの木の扉や窓はみんな町に持っていかれた。でもどこにも見当たらないんだ」
また、本作では、出てくる大人のほとんどが、少年に対し、協力的ではないんです。
ルールだから、躾だからと、子どもの意見を全く汲み取ろうとしません。
これもまた、国家が作ったおかしな体制に縛られた悲しい大人を描いているわけです。
小津安二郎
キアロスタミ監督は、小津安二郎の大ファンだそうです。
そのため、随所に小津調と呼ばれる小津安二郎らしいカットが使われます。
これによって、イランの素朴な町の風景や暮らしを感じ取ることもできますよ。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『友だちのうちはどこ?』の見どころと解説をお届けしました。
イラン映画は、必ず予習復習して楽しみましょう!
ただの地味な映画じゃないんだね!
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